「みすゞうた」デザイン誕生の裏側を取材!
~デザイナーへインタビュー~
こんにちは、田村駒HP運営・編集チームです。年末年始は3歳の姪っ子とひたすらプリンセスごっこ遊び。「かわいいけど、疲れたなあ…疲れたけど、かわいいなあ…」なんて思いながら、子育て中の方を心から尊敬するこの頃です。
さて突然ですがみなさん、一度はこの言葉、聞いたことありませんか?
「みんなちがって、みんないい。」
大正時代の幻の詩人といわれる、金子みすゞさんの代表的な詩「私と小鳥と鈴と」の一節です。
田村駒では、金子みすゞさんの詩をデザインで表現するプロジェクト「みすゞうた」を運営しています(「みすゞうた」は田村駒の登録商標です)。
「金子みすゞさん、聞いたことあるよ!」
「詩をデザインで表現するって、どういうこと?」
「すでに『みすゞうた』のファンです!」
みなさんはどちらに当てはまりますか?
わたし自身は、「聞いたことあるなあ」という程度だったので、
「みすゞうた」を記事として取り上げるにあたり、改めて金子みすゞさんの詩をよんでみました。
正直、子どもの頃は、「詩よりマンガや絵本が好き!」というタイプでしたが、
大人になってみて、金子みすゞさんの詩に触れてみると、なんだかとても心に沁みてくるものがありました。
優しくて、あたたかくて、ちょっとクスッと笑ってしまうようなかわいらしさとほっこり感があって…とても心が癒されたのです。
優しさとあたたかさに溢れる金子みすゞさんの詩から、インスピレーションを受けてデザインしている「みすゞうた」もまた、
詩とぴったり重なるように、優しくあたたかな美しい色合いで描かれているなあと思います。
「きれいだなあ…こんな素敵なデザインをどんな人がしているんだろう?どんな想いをお持ちなのかな?」
絵を描くこと、見ることが好きなこともあってか、自然とそんな疑問がわたしの頭に浮かびました。
現在「みすゞうた」のデザインは、社内のデザイナー、ただお一人が担当しています。
社内といえど、普段業務上のつながりはほとんどなく、話したこともありません。
そこで今回は、「みすゞうた」のデザインを担当する田村駒のデザイナーについて、デザイナーご自身のこと、「みすゞうた」のデザインのこと、「みすゞうた」への想いについて、たっぷりとご紹介したいと思います。
少し長めの15分程度の記事となりますが、是非最後までお付き合いください!
「みすゞうた」デザイナーって、どんな人?
デザイナーと初対面
普段大阪本社で業務を行うデザイナーと、東京本社で業務を行うわたしは、今回が初対面。
お会いする前は少し緊張していたのですが、デザイナーの柔らかい物腰、優しい笑顔で緊張もすぐにどこかへ飛んでいきました。
デザイナーになるきっかけ ~「じゃあ、絵、描いてみれば?」~
デザイナーは、幼少期の頃ピアノを習っており、ピアノで芸術大学を目指していました。
しかし、芸術大学を目指すグループのなかでも、自分が一番下手だと感じており、「このままでは絶対に合格できない…」と、途方に暮れていました。
そんな時、デザイナーのお兄様は芸術大学に通われており、いつものようにお友だちを家に連れてきていました。
デザイナーが相談してみたところ、お友だちの一人が、こう提案したそうです。
「じゃあ、絵、描いてみれば?」
元々デザイナーのお父様は写真を、お兄様は陶芸をやっていらっしゃる芸術一家。
小さい頃からよく美術館にも連れて行ってもらっていました。
そうした家庭環境で育ち、絵にも興味があったデザイナーさんは、その一言をきっかけに思い切ってピアノをやめ、毎日1枚、精密描写の練習を始めたのです。
そして見事、芸術大学の工芸学科染色テキスタイル科に合格!
デザイナーへの道を歩んでいくことになります。
テキスタイルデザイナーへ ~「はい、布が好きだからです!」~
染色テキスタイル科を選んだのは、小さい頃から手芸が好きで、もともと布が好きだったから。
芸術大学の入試面接のとき、志望理由を聞かれて
「はい、布が好きだからです!」
と答えたそうです。
同じように田村駒の入社面接のときには「なぜ田村駒に入社を希望するのですか?」という質問に対し、
「はい、布が好きだからです!」
と答え入社、現在に至ります。
今でも90%のお洋服はご自身の手作り。取材時も手作りとは思えないほどクオリティの高い、自作のお洋服を着ていらっしゃいました!
デザイナーは田村駒に入社し、「意匠企画室」という、プリントやジャガードの図案を作成する部署へ配属。
しかし、時代の流れと共に徐々に縮小…仕事仲間が減っていく寂しさから、辞めたいと思ったこともあったそうです。
それでも長年続けてこられたのは、「仕事が好き」という想いがあったから。
インテリア関連を中心に、お客様のご希望に合わせてデザインしてきたデザイナーでしたが、2015年転機が訪れます。
「みすゞうた」って、どうデザインしているの?
「みすゞうた」デザイナーへ ~「『みすゞうた』始めるんやけど、絵、描ける?」~
「金子みすゞさんの詩からデザインするプロジェクトを始めるんやけど、絵、描いてくれんかな?」
2015年、そう聞かれたデザイナー。とても驚きましたが、とりあえずやってみることにしました。
しかし、存在するのは、金子みすゞさんの詩、ただそれのみ。デザインのヒントを誰も与えてはくれません。
「これはどうしたものか…大正ロマン風?いや違うか…」
デザイン当初は、かなり悩みました。始めて3年間くらいは参考になるものを用意し、デザインしていたそうです。
しかし、「どこかで見たことある…せっかくのオリジナルデザインブランドだし、なんか違うのではないか…?」
と、試行錯誤しているうちに、少しずつデザインの方向性が見えてきます。
オリジナルの描き下ろしへ ~「日常のなかにデザインのヒントはたくさんある」~
現在は、日常のなかの「かわいいな」「素敵だな」と感じたものを見つけては、その場で付箋にメモしたり、スケッチしたり、アイディアを溜めています。
美術館や展示会を訪れ、いろいろな絵やデザインもみますが、「素敵だな」と思ったその時にスケッチすると影響を受けることがあります。
そのためすぐにデザイン化せず、頭の片隅に置いておく。
そうして溜まったアイディアがどの詩とリンクしそうか、再度詩をよみ直し、デザインしていきます。
「この詩、素敵だな、デザインしたいな。」
と、詩を先に決めてから、デザインすることもあります。
その際も、普段から少しずつ溜めていたアイディアのどれと結びつけられるかな、と考えます。
「みすゞさんの詩のように、日常の中にある風景、木や雑草、空、水、空気…特別ではない、あたり前のもの、そういった中にデザインのヒントはたくさんあって。
生活をしていて思うこと、目にしたことをスケッチブックにかき留め、詩をながめ…思いついたらちょこちょことかき足して。
そうして、みすゞさんの言葉のイメージを膨らませています。」
デザインするときは材料にこだわらず、たまたま家にあった革のハギレに描いてみたり、お惣菜が入っていた容器をパレット代わりにしたりと自由なスタイル。
ちなみに晩酌しながらデザインするのはお決まりのスタイル。
「油性ペンでスケッチしている時に、裏側にしみちゃってね。でもそのしみ具合が素敵で、そこからデザインを思いついたこともあったり。
思いついたときはとっても嬉しいし楽しいねん!」
こうしてオリジナルにこだわった、描き下ろしデザインが生み出されています。
金子みすゞさんの詩との出会い ~「なにか、導かれたような気もする」~
「わたしがみすゞさんの詩を初めて知ったのは2011年、3.11の震災の時のCMなんですよね。『こだまでしょうか』の詩の朗読が、とても耳に残って印象的で。
それから5年経って『みすゞうた』のプロジェクトに関わることになって…『こだまでしょうか』を一番初めにデザインすることになりました。
なにか、導かれたような気もします。」
「こだまでしょうか」から始まり、金子みすゞさんの詩にふれるようになったデザイナー。
「私と小鳥と鈴と」「星とたんぽぽ」「草原の夜」など、好きな詩はたくさんあります。なかでも特に好きな詩は、「明るい方へ」という詩。
「かわいくてきれいやなぁと思って、蔓万年草(ツルマンネングサ)をスケッチをしててね。
小さな星が無数に集まったようなお花で、でも素朴な雑草。
このスケッチに合う詩あるんかな、と思ってみていると、『明るい方へ』という詩にぴったりやと思って!」
「現代にも響く詩を、100年以上も前に作っていたみすゞさんて、本当にすごいわなぁ。逆に今なのかな、って思うくらい。」
金子みすゞさんの詩に込められたメッセージを「みすゞうた」でデザインすることは、現代のわたしたちにより一層、癒しやエールを与えてくれるような気がします。
「みすゞうた」への想い
デザイナーにとっての「みすゞうた」とは ~「オリジナルの大切さを教えてくれた」~
「わたしにとって『みすゞうた』は、オリジナルで描くことの大切さを教えてくれた、素敵なプロジェクトですね。」
そう語ってくれたデザイナー。
心あたたまる素敵なエピソードとともに、目指す世界観も教えてくれました。
「みすゞうた」が目指す世界観 ~「行ったり来たり。会話になって、思い出になる」~
ある「みすゞうた」ファンの30代女性は、お子さんのお洋服を作ろうと、手芸店を訪れました。
たくさんある生地の中から、「みすゞうた」のデザインの一つ、「星とたんぽぽ」を選びました。
家に帰り生地を広げると、生地端になにやら文字が書かれていることに気が付きました。
「これはなんだろう?」
と思い調べてみると、金子みすゞさんの詩であることを知りました。
すべての「みすゞうた」のデザイン生地には、生地端にそのデザインに関わる金子みすゞさんの詩が書かれているのです。
「みすゞうた」ファンの女性は、「星とたんぽぽ」の生地でつくったお洋服に身を包んだお子さんと一緒に、このデザインの意味を考えたり、金子みすゞさんの詩をよんだりしてくださったそうです。
「この話を聞いて、本当に嬉しくなってね。『みすゞうた』は、言葉と色彩が『行ったり来たり』。
それが会話になり、思い出になる。
そこからあたたかさや優しさが生まれる…そんな世界を作っていきたいなあ、って。」
「みすゞうた」を誰に届けたい? ~「『みんなちがって、みんないい』」~
デザイナーはこんな風にも語ってくれました。
「『私と小鳥と鈴と』の一節にある、『みんなちがって、みんないい。』というように、世の中にはいろんな人がいる。
『みすゞうた』に触れた時の、捉え方や感じ方も人それぞれやと思います。同じ人でも、その時どきによって感じ方は違うかも。
みる人、タイミングによって受け止め方が違っていい。だからこそいろんな人にみてもらいたいし、その違いを楽しんでいただけたら嬉しいなあ。」
「みすゞうた」を通して広がる輪 ~「垣根を越えたチームで作る」~
「『みすゞうた』は、チームでつくりあげています。
わたしはデザイン担当やけど、ほかにもディレクター、SNS担当、マーケティング担当…社内のいろんな人が集まっててね。
部署や年齢も全然違うんやけど、みんなで話し合いながら、同じ方向を向いて進めています。それがとってもおもしろいなあと思ってて。
『みすゞうた』を通して、いろいろな人とのつながりが出来て、楽しいなって思う。『みすゞうた』をやっていたから、こうしてあなたとも出会えたし!」
「みすゞうた」は部署や年齢といった垣根を越え、人の輪を広げてくれています。
この素敵な輪が、もっともっと広がるよう、チーム一丸となって「みすゞうた」をつくりあげていきます。
「みすゞうた」のデザイナーはやっぱり素敵な人だった!
こうして、あたたかい雰囲気の中、取材を終えました。
直接デザイナーの人柄に触れ、デザイナーのこと、「みすゞうた」に対する想いを知ったことで、より一層「みすゞうた」を好きになっている自分がいました。
素敵なデザインには、その人自身の素敵さが反映されるのだなあと実感しました。
「みすゞうた」をいろんな人に知っていただき、「みすゞうた」の世界観を広げられるよう、サポートしていきたいと思います。
「みすゞうた」は、テキスタイルデザインを中心としてきましたが、今後は香り、陶器といったテーマでも広げていきます。
「みすゞうた」に興味をもって下さった方は、是非公式HP・Instagramもご覧ください。
「みすゞうた」を通し、みなさまの生活が優しさとあたたかさで溢れたものになりますように…