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田村駒 グループ運営強め市場開拓 生活関連資材を柱に消費者目線で開発

田村駒は、アパレル不振や過剰在庫の見直しで、「従来のお客様に、従来の価格で、従来の量を納めるビジネスは戻らない。誰に、何を、どう提供するのか。独自性のあるものを供給するなど求められる機能、ビジネスの中身が変わる」(植木博行社長)と、今を転換点だと捉える。

4月から次期中期経営計画が始まる。植木社長は骨子は明かさなかったが、グループ運営の強化や生活関連資材を柱とすること、高齢者・介護市場向けの拡大、海外市場の継続開拓、衣料品事業の高度化、新しい分野や事業の開拓、消費者目線での商品開発、デジタル技術の活用などがテーマになりそうだ。

グループ運営の強化では、「本社、子会社の関係ではなく、グループ全体で事業を組み立てる」と各事業部と親密度が高い子会社をひも付けて連携。重複を減らしながら得意分野を生かす体制にする。例えば、百円均一ショップ、手芸市場向けで堅調なツクリエのノウハウを本体で伸びている百均以外の均一価格ショップ向けで活用したり、ツクリエが取り組むSNSでの発信などを通じて「消費者目線での商品開発を進める」など様々な面で連携する。

特に成長を期待するのが家電品関連やセイコー電機製作所グループなど生活関連資材。家電関連では中国から、今後ニーズが高まるタイなど東南アジアへの生産シフトを進める。セイコー電機製作所グループの活用では既存事業に加え、海外で電気自動車向けを狙うなど伸び代が大きいとみる。

「誰に何を売るのかも様々な切り口がある」と、上期30万枚納品した医療用ガウンやマスクといった「ディスポーザル(使い捨て)がテーマの一つ」と植木社長。ビジネスホテルなどに向けた使い捨てのベッドカバーや枕カバーなどの販売を始め、病院向けなどにも広げる。

田倉繃帯工業を買収したのは高齢者向け、介護向けでサポーターなどの新商材を開発し、田倉繃帯の持つ医療機関向け以外の販路に広げるため、「田倉繃帯は石川県に織り、編みの設備を持ち、なま糸から撚糸、サイジングまで一貫でできる。日本製で何でも作れるという生産機能が今後生きる」と新商材を開発し、新販路での販売を狙う。

「消費者目線で商品開発するために消費者に近づくという視点は必須」と、幼児・介護向けなど一部商材によってはSNSなどを活用し、消費者向けに販売することも視野に入れる。こうした新商材では価格でなく独自性で勝負する。例えば製造特許やブランドロイヤリティー、独占販売権の取得など「田村駒からしか出ない」商材を増やし、価格競争から抜け出す。

「主戦場。踏ん張る」。適時、適量を求める顧客には中国生産で対応。納期、品質を重視した「丁寧な物作り」でロスを減らし、収益を確保する。一方で単一商品を比較的大量にコストを抑えて作ることを望むアパレル企業やディスカウンター、ホームセンター向けにはバングラデシュを活用するなど顧客ニーズに応じて生産地を使い分ける。

基幹システムを2,3年かけて刷新し、デジタル化を進める。ペーパーレス化やストックビジネスでの活用など、様々な面でデジタル技術を活用した取り組みを進める。

「独自性のある商材の提供など商社に求められる機能が変わる。それに合わせて評価ポイントも変える必要がある」と、これまでは利益と売り上げの成長を重視してきたが、今後は仕事の中身や独自性、新規市場の開拓、最終的な商品利益率の向上などを重視する評価制度に変えていく。

伸びているのは上期にマスクや医療用ガウンを納品したリビング製品や田村駒上海紡織品、セイコー電機のマレーシアや田倉繃帯、上海と煙台に家電組み立て工場を持つ山城工業など。「グループ会社、特に海外子会社が健闘しており、コロナ下でも踏ん張れている」と通期では、経常利益22億〜23億を見込む。

2021年2月10日 繊研新聞